吉田屋の蔵元が語る「日本酒」のお話。
「日本酒」の歴史背景や現状、そしてこれからの「日本酒」のことなどを
少しだけですがお話しています。どうぞお酒を飲みながらでもご覧下さい。
 「日本酒好きの方は今の日本にどれくらいいらっしゃるんだろうか?」そんなことをふと思うときがあります。 近年、日本での消費は減退傾向にあるわけですが一方、アメリカ・フランスを中心として日本酒、とくに吟醸酒は人気が高まっています。このお話をする上で、少しだけ日本酒の歴史を振り返って考えてみたいと思います。
日本酒の起源はよくわかりません。稲作が始まった頃なのか、もっと後になってからなのか・・・。私は歴史研究家ではないので、その真偽はわかりませんが、日本酒は大昔からあったのは間違いないと思います 。
「日本酒」のことを振り返ると、私達が知る身近な歴史の中で戦争が大きく関連してきます。
 

昭和12年(1937年)の日中戦争、今から70年くらい前ですね。この時戦争の影響で、 米不足→酒の生産減少→水で薄めた日本酒の横行という流れがありました。
このため、日本政府がアルコール濃度の規格をつくり管理されるようになったんですね。
そして昭和16年(1941年)には太平洋戦争が始まってさらに米不足に・・・。
当然ながら戦時中の他の物資と同様に「日本酒」も配給制になりました。戦争が終わって、この配給制も開放され日本酒の販売は自由に行えるようになります。ただし、なんでも自由かというとそうではなく、国から認められた指定の業者、すなわち清酒メーカーがこの役割を担っていたんですね。
その後、日本の成長にあわせて「日本酒」の生産も鰻登りに増加。昭和48年のピークを迎え、その後低迷に入ります。
さてさて、そんな歴史背景(簡単ですが・・・)を知った上で、ここからが大事なお話・・・。
 
 
 映画「オールウエイズ 3丁目の夕日」という映画がありますが、(涙ものの映画です)この映画はまさしくそんな時代背景の映画です。とても感動的な映画で昭和の時代背景が見事に表現されていますね。この映画の中には昭和の良さみたいなものが描かれているわけですが、そのストーリーには、新しいものが次々に出てきます。テレビ・洗濯機・冷蔵庫・新しい生活スタイル等々・・・。どんどん生活は豊かになって生活は多様化していきます。
 僕たちが子供の頃の話ですから 「うわー、懐かしい、そうだったそうだった!こんな風だった」 なんていう目線でみるわけですが、その反面、 「あー、こうして日本は良くも悪くも変わっていったんだ」と痛感します。
 

 
 
「日本酒」もこうしたその後の日本の生活の中で大きく変化していきます。日本は島国ですから、魚や畑でとれる野菜が食文化の中心でした。比較的味が薄めで、ギトギトした味のものは少なかった。その食べ物の味にあわせて旨かったのが「日本酒」です。
しかし、食生活が大きく変化して欧米化していきました。ハンバーグ、ステーキなどの肉食の比率が急増していったわけです。僕が思うに、ハンバーグやステーキなどの欧米の食べ物には基本的に「日本酒」はあいません。料理の味が強すぎて「日本酒」の味が負けます。
 

 
八代亜紀さんが歌う「舟唄」 ってご存じですか?
 
お酒はぬるめの 燗がいい
肴はあぶったイカでいい
女は無口な ひとがいい
灯りはぼんやり 灯りゃいい
しみじみ飲めば しみじみと
想い出だけが 行き過ぎる
涙がポロリと こぼれたら
歌い出すのさ 舟唄を
 

 
 日本酒の飲み方にルールなんて必要ない、それぞれ楽しく飲めばいいと思いますが、「肴はあぶったイカでいい」なんていうのがやっぱり美味しい。
 
 
「日本酒」はビールやウイスキー、ワインに比べるとすっきりとした味わいのお酒です。だから、シンプルなつまみが美味しい。でも、今は「食」のほうが先にあるから、食べる物にあわせて酒が決まるわけですが、すでに欧米化されてしまった食生活や食の多様化の中では日本酒がメインになることはありません。この食生活の変化が「日本酒離れ」の一つの原因です。
 
 居酒屋が非常に増えました。それもチェーン店タイプの居酒屋。居酒屋では非常にたくさんのメニューを準備してお客を集めます。 和食・中華・イタリアン・アメリカ等々様々な国の料理をアレンジして酒のつまみにします。例えば人気メニューの唐揚げ。 皆さんは唐揚げだったら何を飲みますか?
そうですね、まずは「ビール」ですね。僕だってそうです。味が強く、油で揚げられた唐揚げだったら、そのあとくちをスッキリさせるビールが美味しいですね。
そういったチェーン型居酒屋のメニューは、 残念ながら日本酒を美味しく飲むためのメニューではありません。
このチェーン型居酒屋の急増も「日本酒離れ」のまたひとつの原因。

 
それからコンビニエンスストア。 皆さんの暮らしの中にはコンビニエンスストアは大きな存在になっていると思います。 コンビニにはビールもワインも焼酎も、そして日本酒もたくさん並んでいます。
とても手軽で便利です。でも、コンビニに「日本酒」とあうつまみはほとんどありませんね。売れるのはもっぱら「発泡酒」が中心で、ポテトチップスなどのスナック類が主なつまみになっています。
これもまた「日本酒離れ」の大きな原因。
 

 
少なからず、これらの環境の変化は日本酒にとって良いものではありません。あらゆるものが大量生産され、大量販売・消費されていく。 これは確かに経営という考え方の中では必要なことかもしれません。欧米型の合理的な考え方を上手に取り入れている企業は伸びているかもしれません。
しかし、それと同時に日本の酒である「日本酒」、そして「日本の伝統と心」は失われているのも事実です。 「日本の伝統と心」を守ろうとすれば それは不便なのかもしれません。面倒くさいことかもしれません。今の若い人達にとっては「そんなの関係ない」かもしれません。
 

 
でも、「日本の伝統と心」を守るのは大切なことなんじゃないかなって思うんです。
僕たち「日本酒」を手作りする酒蔵にとって「日本酒」を作って売るということは「日本の伝統と心」も一緒に残していくことなのかもしれません。